親子で飲む

 正月も盆も帰省しなかった長男が久しぶりに東京から帰ってきた。
 3日連休を実家で過ごすためだそうだ。
 東京にいる時は電話に出ない。なんと不義理な息子だとつねづね思っている。

 いざ帰って来るとそんな事は忘れて東京の話に花が咲く。
 うすうす妻から長男が今の会社を今月いっぱいで辞めて独立開業すると聞いていたので、その真意を確かめた。
 本当にそうらしい。長男今年で43歳でバツイチ独身である。すでに年金生活者の私には長男を援助する力を持ち合わせていないがエールを送る事ぐらいしかできない。独立は少し遅い気がするがまあ遅すぎる事はないだろう。
 タバコを止めたと言うが目下禁煙開始なのであろう。今は禁煙アプリとかあって禁煙によりどれだけ節約できたか、そして寿命が如何ほど延びたかを表示するらしく只今1万8千円と3日の寿命延長が表示されたと言う。
 一緒に住むか、近くにいれば色々話も出来相談にものってやれたのに、離婚も避けられたかも知れない。田舎を発ってもう23年が経過したと言うからほぼ東京の人間である。それでいて東京は好きにはなれないとも言う。仕事が地方も東京も変わらぬ位にあれば地方に帰る事が出来るのかも知れないが。

 月曜日には空港まで送って行くのが父親の仕事である。久しぶりの帰省で一番喜んだのは妻である。今朝は早くからお袋の味の味噌汁を食べさしていた。長男は変わった趣向がある。いつ帰省してもいつも標高500mに満たない瀬戸内が展望できる近くの山に登る。今朝も小雨が降る中出発した。
 昨夜の息子との一杯の飲みはお互いを身近に感じるひと時ではなかったのか。