スペインで見たあれはドラッグだったのか?

 最初に断っておくが私はドラッグの経験者でもなくその知識もない。
 今から10年~20年前にスペインに住んでいた時の話である。
 当時アルカラ・デ・ヘナレスの語学学校に通っていた頃、ある日マドリドに買い物に行った帰りの電車内の出来事であった。車内で時折ジプシー(ヒタノ―)と呼ばれるスペイン南部の人達と出くわすことがあった。顔も服装もスペイン人と少し異なる人達でタバコをねだられたりすることがある。
 彼らは関係ない話である。隣の車両から移って来た若者2人の一人が私が日本人であることを発見してハポンハポンと煽ってきた。連れの一人は止めに入ったが止めようとせず段々と近づいて来た。真昼間からアルコールではなくドラッグだと予知した。自分の降車する駅ではないが停車した駅にすぐさま下りた。
 あのまま乗っていたらどんな事が起きたのだろうか?当時52歳であった。

 それから半年後北のサンセバスチャンに移動し就職活動を始めた。

 当時サンセバスチャンはテロリスタETAの活動本拠地と言われ警察の監視の厳しい時代であった。そんな中でサンセバスチャンの大学に籍をおいてスペイン語を学んでいた。大学の裏庭で女子大生が手の平に葉っぱを丸め火で炙ってタバコのよう吸い始めた。やはりあれもドラッグの1種ではなかったのだろうか?

 同じくスペインのバスク地方で働き始めた頃のある休日、比較的近くに位置するピカソの絵で有名な”ゲルニカ””に行く途中の出来事である。自分の住む村から直接ゲルニカに鉄道の接続はなく途中乗換えが必要でホームで待っている時のこと。

 隣に居合わせた2人連れの若者が私に向かい
 「ハッシッシをやろうか」
 と言ってきた。それは売ろうというのではなくプレゼントしようと聞こえた。
 当然断った。ゲルニカは小さな村でむしろ可愛いとも思えた。

 スペイン国内では麻薬取締は軽いと言われていたのを聞いたことがあるが、入国時の審査が厳しく結構重い罪に罰せられるらしい。

 一時高速道路の逆走が問題になったが、酒気帯び運転がきびしくなり代わりにドラッグを利用して自殺まがいの逆走が横行するニュースで賑わった時期がある。

 今現在はどうなのか解らないが8年前に絵を描きにスペインに行った時、EU拡大で東ヨーロッパの国々の人達がサンセバスチャンに入り込み公園でホームレス生活をして市民は治安悪化を嘆いていたのを聞いた。それとテロ集団ETAの解散により国家警察の監視が緩やかになりアフリカ諸国の人達の北上が進みドラッグの北上もありうると思われる。
 最近スペイン北部への観光ツアーも増えたと聞いているが泥棒とドラッグには注意する事に越したことはない。