化粧

 最近でもないがショッピング・モールの化粧品売り場の前を通るとオーデコロンの香りと共に「maquillage」書かれた美人の写真入り看板が目に付く。
 maquillageはフランス語で化粧の意味である。
 maquillageの単語は一般受けするのだろうかと疑問のを持つ。
 昔スペインの語学学校で日本語西訳の宿題で化粧するというのが出た。
 我々は化粧するとはmakeupと咄嗟に思いつくものだがスペイン語ではmaquillajeということを知った。スペイン語とフランス語はラテン語を母体としているので大変良く似ている。
 しかしよく見ればラテン語のmaと英語のmaは発音こそ違うが、スペルは共通していて英語もラテン語から文派したものだからと合点がいく。
 化粧の話が出たから私の妻の話を書こう。おんとし65歳を過ぎたと思うが結婚このかた化粧をしたのを見たことがない。45年ほどになるが数回程度の化粧した顔しか見たことがない。という事は全く見たことがないと言うことである。
 多分化粧の仕方を知らないのだと思う。
 昔から忙しい生活の中で人よりも合理的な時間の過ごしかたをしてきた彼女にとって化粧にとられる時間がもったいないのだと思える。
 従って化粧品も鏡も彼女には不要なものである。化粧をしないことは顔より下に着る衣装にも全く興味を示さない。
 習慣とは恐ろしいものである。
 いずれにせよ経済的には家計を随分助けていて文句など言える立場にはないが。
  でも70歳近くになるとぼちぼち化粧のまね事でもしたらと思う。
 しかし、化粧したなれぬ顔は返って興ざめするものかもしれない。
 世の夫達は化粧した顔、化粧を落とした顔の両面を見て暮らす。少しうらやましくも思えるが。